EC構築から「事業成長の土台づくり」へ:今日ECベンダーの「提案力」とは?

Shopifyも含めEC構築は、いまや「サイトを作って売る」だけでは差別化が難しくなっています。顧客が本当に求めているのは、単なる販売機能の実装ではなく、DTC/D2C事業の成長を支える仕組みです。

ベンダー側の提案力も「機能実装の巧さ」から、「事業のバリューチェーン全体を理解し、どこにテコを入れれば伸びるか」を描ける力へと移っています。

付加価値の高い「開発」とは何か:DTCのバリューチェーン全体から逆算する

ECシステムの導入はゴールではなく、事業成長のための手段です。DTC事業を本当に底上げするためには、集客、販売/サービス、フルフィルメント、カスタマーサポート、データ蓄積/分析、オペレーション改善/変革といった一連の流れを、分断なく支える必要があります。

持つべき視座

ここで重要になるのが「持つべき視座」です。

事業成長を支える4つの視座

  • 中長期の戦略や差別化に耐える拡張性 — 短期的な機能実装だけでなく、将来的な事業拡大を見据えた設計
  • データの力(Power of Data)を最大化する設計 — データを蓄積し、分析し、意思決定に活用できる仕組み
  • 機能ごとの分断からの解放(シームレス化) — 集客から販売、フルフィルメント、サポートまでの一貫した顧客体験
  • 「効率的な運用」から逆算した仕組みづくり — 現場が回せる運用設計と、継続的な改善サイクル

これらの観点で顧客と同じ地図を持てるかどうかが、ベンダーの付加価値を大きく左右します。

DTCビジネス拡大に導く開発(戦略・機能・運用のつながり)
図1:DTCビジネス拡大に導く開発(戦略・機能・運用のつながり)

増しているのは「領域をつなぐトランスレータ」役

現場では、事業・開発・データの各領域がそれぞれ最適化しようとして、逆に全体が噛み合わないケースが増えています。

典型的な"三すくみ"状態:

  • 事業側は「やりたいこと」がある一方で、ITでどう実現するかを翻訳できず
  • 開発側は短期・アドホックな要求に振り回され
  • データ側は分析の芯を食えない

このギャップを埋めるのが、DX戦略、要件定義、PM、コンサル的な仮説構築、データアーキテクトなど、領域横断の「通訳者(トランスレータ)」です。

Shopifyベンダーが提案力を強化する上でも、ここを担える人材・機能をどこまで持てるかが勝ち筋になります。

各領域をつなぐ役割(事業・開発・データのギャップを埋める)
図2:各領域をつなぐ役割(事業・開発・データのギャップを埋める)

顧客コミュニケーション強化は「営業力」ではなく「組織能力」を底上げする

提案力の強化は、結局のところ顧客理解の深さで決まります。ポイントは、意思決定の前段階から顧客接点を持ち、悩みの構造を一緒に掘り当てることです。

価値は"御用聞き"ではなく、課題理解や改善検討の早期に、意味のある視点を打ち込むことにあります。

顧客の事業構造を理解することで得られる力

組織能力としての設計

提案力を属人スキルで終わらせないためには、「顧客接点」「コミュニケーションの武器」「組織知としての蓄積」をセットで設計し、運用することが有効です。

組織能力を底上げする3つの要素

  • 顧客接点 — 継続的な対話の場と信頼関係の構築
  • コミュニケーションの武器 — フレームワーク、テンプレート、可視化ツール
  • 組織知としての蓄積 — ナレッジベース、事例集、学習サイクル
顧客コミュニケーション強化(ポイント整理)
図3:顧客コミュニケーション強化(ポイント整理)

まとめ

生成AIで全て仕事の仕方が変わる時代を迎え、顧客と同じビジネス視点で提案を出来ないエンジニアリング思考の会社は存在価値がもう既にないと言えるのではないでしょうか。

ECベンダーに求められるのは、単なる技術提供者ではなく、事業成長のパートナーとして、バリューチェーン全体を理解し、領域を超えて価値を繋ぐ「トランスレータ」としての役割です。

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